細木

 実家を題材にした番組制作のため、この町に来るという。
 良妻賢母を意識しない女性を否定し、もっとらしいお説教で自分の価値観を押し付ける。その話し方は常に断定的で私には嫌味にさえ感じる。
家族のために尽くしなさい。女は三歩下がって影を踏むな。常に男性を立てる事が賢い女性である。

 顎で使われる奴隷か?

私の両親も似ているわ。「嫌なら仕事を辞めてやるぞ」と脅すから母は余計に無口だった。
私はそんな男性天国の家が嫌いだった。不平等な環境で18年もよく我慢できた。
この家に生まれたくなかったと思う事が何度もあって、自分が生まれた事も否定してしまった。

自分が思い描く自分になりたくて家を出る人は少なくはないでしょう?
 私は親兄弟の期待を踏みつけて今も生きているのだから、死ぬまで頑張りたい気分よ。