読み聞かせ『人類発祥の地アフリカ』

『人類発祥の地アフリカ』関野吉晴著 小峰書店http://www.amazon.co.jp/gp/product/4338124156?tag2=hankyushop-22

 

 ぼくらがお世話になったのは、アリさんの家でした。アリさんは合わせて200頭のヤギとヒツジをかう牧畜民です。ラクダとロバも持っています。エチオピアはアフリカでも貧しい国ですが、国内にも地域差があります。アファールさんが暮らすのは、エチオピアでもとりわけ貧しい地域です。アリさんも決して裕福というわけではないのに、見ず知らずの僕らのために2頭の子ヤギを殺してご馳走してくれました。旅人へのもてなしは、アファールにとって極めて大切なことなのです。
 アリさんには、たくさんの息子や娘がいます。家畜の放牧や乳搾りなど、みんなそれぞれ仕事を持っています。ヤギ革の袋にミルクを入れてゆすっている女性がいました。こうすると脂肪が分離してバターができるのです。
 結婚のときには、子どもたちに家畜を分け与えなければなりません。もっともっと家畜が必要です。僕はアリさんに、
「家畜がふえるといいですね」
と言いました。世界中どこの牧畜民も自分たちの家畜がふえることをのぞみます。アリさんもそうだと思ったのです。ところがアリさんは、
「いや、これで十分ですよ」
と意外なことを言います。ぼくが
「どうしてですか」
と聞きかえすと、
「今のままで私は幸せですよ。家畜は神からさずかったものですからね。家族もみんな元気で仲がいい。飢えることもありません。これ以上なにものぞむことはありませんよ」
とふくやかな顔をほころばせます。
 そういわれてみると、アリさんの暮らしには不足しているものがありません。家族がみんな仲良く暮らし、食べ物もあります。日本のようにさまざまなモノがあふれている社会から見れば、「あれもない、これもない」といいたくなりますが、実はアリさんの暮らしには人間が生きていくための基本的な条件はみんなそろっているのです。シンプルな暮らしですが、アリさんは十分に幸福なのです。

読み聞かせをたくさんしたいです。

問. この内容とあうものを1つ選びましょう。

ア アリさんは、たくさんの家畜を持った裕福な人なので、これ以上なにもいらないと思っている。 
イ 世界中の誰もが、さまざまなモノがあふれている日本のような社会をうらやましいと思っている。
ウ 日本のようにさまざまなモノがあふれている社会から見れば、アリさんの家はとても裕福に見える。
エ アリさんの家は、日本人から見ると貧しいように思えるが、アリさん自身は十分に幸せだと思っている。