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日時:2007年3月18日
07/03/18 信濃毎日新聞(社説)
国民投票法案 無理押しは避けよ

憲法改正手続きを定める国民投票法案の採決に向けた公聴会の開催日程を、与党が決めた。与党単独採決による憲法記念日までの法案成立をにらんだ強硬策である。
 憲法改正の方向を左右する大事な法律だ。法案の中身も十分には詰め切れていない。これ以上の無理押しは避けるべきだ。
 自民・公明の与党と民主党はそれぞれの国民投票法案を、昨年の通常国会に提出済みだ。いずれも継続審議となっている。
 自公と民主党は他方で、三党が一致できる内容にすることを目指して修正協議を続けてきた。投票年齢を十八歳以上とすることなど、合意が重ねられつつある。
 ここへきて与党が強硬に出た背景には、夏の参院選がらみの思惑がありそうだ。▽憲法改正をめぐって賛否両論を抱える民主党を揺さぶる▽安倍晋三首相のリーダーシップを印象づける−などである。
 問題は、今国会での成立を模索するほどには、法案の中身が練れていないことだ。論議不足の点はたくさん残っている。
 例えば投票のテーマである。与党案は憲法改正に限っているのに対し、民主党案は憲法以外にも対象を広げている。憲法以外の問題も国民投票で決めるとなれば、政治は直接民主制に一歩近づく。軽く考えてはいけない論点だ。
 新聞への意見広告規制にも問題が残る。与党案には、賛否にかかわらず料金などの条件を平等とするよう配慮する規定が設けられている。新聞広告に規制がかけられると、自主的な意見表明が妨げられる心配が強まる。「表現の自由」にかかわる重大な問題である。
 白票を反対票に数えるかどうか、改正項目を個別に問うのか一括か、といった点も詰め切れていない。
 憲法改正を国会が発議するには、衆参各院で総議員の三分の二以上の賛成を必要とする。これに対し国民投票法は各院の過半数で制定できる。普通の法律と同じである。
 ただし、国民投票の仕組みがどう決まるかによって、憲法改正も影響を受ける。国民投票法についても憲法と同様、できるだけ多くの政党の賛成で決めるのが望ましい。自民、公明の与党と野党第一党民主党の合意は最低限、必要である。
 共同通信の最近の世論調査では、国民投票法案に「賛成」する人は半数以上にのぼるものの、そのうち七割近くは「今国会成立にこだわる必要はない」と答えている。教育基本法改正と防衛庁「省」昇格法制定の余勢を駆るかのように突き進むようでは、国民の理解は得られない。




2007年3月18日(日)「しんぶん赤旗
改憲手続き法案で「靖国」派
さらなる改悪を提起

 改憲手続き法案の今国会成立を狙い強硬姿勢を強める自民党の中から、民主党との「協議」を通じての与党案の「修正方向」を見直し、「もとに戻せ」と法案のいっそうの改悪を求める声が出ています。
 衆院憲法調査特別委の自民党理事は十五日、二十二日に強行設定した公聴会後、与党単独で修正案を提出する意向を示しつつ、「修正をやめてもとに戻せという声も出ている」と述べました。
 右翼改憲団体の日本会議ホームページによれば、同会議国会議員懇談会が十三日に国会内で改憲手続き法案の勉強会を開催。講師が「成立を急ぐあまり自民党公明党民主党の要求に対して、次々と譲歩を繰り返してきた」「このままでは、この法案は『憲法改正阻止法』となりかねない」などと提起しました。
 勉強会には、古屋圭司氏ら安倍晋三首相に近い自民、民主両党の有志国会議員が参加(「産経」十四日付)。その後、同紙紙上などで、改憲手続き法案の「修正方向」批判を強めています。
 見直し要求の焦点は、公務員法上の政治活動規制の「適用除外」をやめ規制を復活させる、公務員・教員の地位利用の禁止に刑罰を復活させる、偏向・虚偽報道への規制を復活させる、国民投票手続きの三年間の凍結をやめ直ちに施行することなどです。
 古屋氏は日本会議国会議員懇談会の副会長を務めるなど自民党内でも有数の「靖国派」。首相の靖国神社参拝や歴史教科書問題、教育基本法改定問題で安倍晋三首相らとともに急先鋒(せんぽう)の役割を担ってきた人物で、昨年の郵政「造反」復党組の一人です。安倍首相の号令で今国会の成立へ強硬姿勢を強める与党内で、「靖国派」議員から改憲実現のためにいっそう手続きのハードルを下げよとの要求が強まっていることに警戒が必要です。




7年03月18日  高知新聞
国民投票法案はアンフェア 法科系塾の伊藤真さん

 国民投票法案は、改憲派に圧倒的有利でアンフェア――全国各地で憲法について分かりやすく解説している法科系の著名指導校「伊藤塾」(東京都渋谷区)の塾長、伊藤真(まこと)さんがこのほど、高知市本町4丁目の県民文化ホールで講演し、安倍内閣が成立を目指す国民投票法案について、「テレビCMで国民を洗脳し、改憲に持ち込む危険性がある」として問題点を列挙した。
 「ウインド・オブ・ピース」の主催。会場には約300人が詰めかけた。
 伊藤さんはこの夜、教育基本法の改悪点として「教育の目的が『国家や社会の形成者として必要な資質を備えた国民をつくること』に180度変わった」と指摘。「個人よりも国を大切にする教育。これは憲法改悪への布石だ」とした。その上で自民党の新憲法草案について条文ごとに問題点を列挙。「この案には『人権など権利ばっかり主張しないで、国防や愛国の義務を果たせ』という考えが満ちている。これは国民を誤解させるフレーズだ」とした。
 「そもそも権利に義務は伴わない。権利は権利、義務は義務。別物です。わたしが友達に1万円を貸したとする。わたしには『返せ』という権利がある。相手は返す義務がある。だけどわたしに義務はこれっぽっちもない。国民に人権という権利があるとき、国の方にこそ『人権を守る』義務がある。国民に義務が伴うというのは、うそです」と明快に解説した。
 伊藤さんはこれらを踏まえた上で、国民投票法案の問題点を次々挙げた。中でも「有料意見広告」について触れると、会場にざわめきも。
 「投票の14日前から規制するというが、全面規制すべき。『有料意見広告』とはテレビコマーシャルのことだ。15秒とか30秒とか流されるもので、全国で1日流すと5億円くらい掛かるといわれる。改憲派には財界がついていて、多額のお金でがんがん流すだろう。反対派にそのことができますか。テレビ局は規制すべきでないと言っている。コマーシャル収入のチャンスだから」
 「国民が冷静に判断するために必要な情報は規制してはならない。しかし10秒、15秒のスポット広告を繰り返し流すのは洗脳、マインドコントロールです」
 伊藤さんは過半数の定義についても言及。「例えば投票率40%なら、有権者の2割の賛成で憲法改正できてしまう。国民投票の手続き法は、改正反対どちらにもフェアでなければならない。しかし原案は圧倒的に改憲しやすくなっている」と警鐘を強く鳴らした。

 賛成・反対のどちらか選べない人の投票も分母の数から外れ、無効票になる。分母が小さい状況での過半数で可決されるのは間違っている。

 憲法第9章 「改正」 第96条 この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。

 たとえば改憲提案者が「憲法第9条、第2項を削除する」と改正案を提出、その提案に対し国民が投票して決める。今のままなら改憲提案者にはハードルが高いものだ。
 改憲提案者にこのハードルをなくすのが改憲手続き法案であると認識できる。
 また、改憲手続き法案はそれ自体が違憲立法だともいえる。「国会議員は憲法擁護義務を負う(憲法99条)」ことから国会議員に改憲手続法を策定する権利はない。これは憲法上の義務違反である。