住み処の重要条件

小さい頃、小学生になる前までの私はいつも兄の真似をして困らせていたのだと思う。
2歳頃には兄の後を追ってどこにでもついて行こうとしたに違いない。
離れてから30年が過ぎてしまって兄たちのことを思い出してみようとしてもいい思い出はほとんどない。
思い出せるのは怖かったことと痛かったこと。食べ物を取られてお腹が空いて泣いていたこと。

小学生の頃はテレビの音が煩くて嫌いだったから隣の部屋で絵ばっかり描いていたかな。そんなとき兄たちと両親が大笑いしているのが聞こえてきて耳をふさいでいたりした。



「お嬢さんだから大事にされて可愛がられたでしょう」
という社交辞令めいたセリフが的外れだと意識するようになったのはいつ頃だったかしら。

最近は
「こちらの出身ですか」と訊かれることがあります。
「いいえ、血縁者や知り合いは誰もいません」と答えます。
「なぜここに来たのですか」と訊かれます。
「いい場所だから」と答えています。

「兄たちのいる場所から出来るだけ遠くにいたいから」という本心は口にしないでいます。
ここは安全地帯というわけです。

(こんなふうに家族を貶すと世間では白眼視されますね。私の二人の兄は立派な内科医です。)