癖のあるヒトを保護、育てる?「怪造」

http://www.mainichi-msn.co.jp/tokusyu/wide/news/20070829dde012010075000c.html
内閣改造・オバサン3人衆の目 コンセプトは「ボクちゃんを救え」!?
 安倍晋三改造内閣が発足した。鋭い観察力を持ち、ズバリもの言う「オバサン」力に注目する夕刊編集部としては、やはりオバサンの見方が気になる。山田美保子さん(50)、江川紹子さん(49)、石川結貴さん(45)に再登板をお願いした。【夕刊編集部おばさん取材班】

 ◇かたくな、鈍感…安倍さん本人の人心一新が必要

 石川 集合写真を見た時に安倍さんがお舅(しゅうと)さんに囲まれたお婿さんっていう感じがして。

 山田 (漫画「サザエさん」の)マスオさんっぽい。

 石川 サザエさん抜きのマスオ&波平がたくさん、みたい。

 江川 コンセプトは「ボクちゃんを救え」ですね。そのためにいろんな保護者をかき集めて。舅ばかりか親類のおじさんをかき集め、揚げ句に病み上がりのおじさんまで呼んだ。

 山田 派閥の領袖ばっかり。「紅白歌合戦」を思い出したんですよ。歌手は芸能プロやレコード会社に配慮して選ばれる。

 石川 演歌もポップスも。

 山田 特に、演歌勢をね。今回、相当、断られたらしいっていうのも紅白っぽい。

 石川 おばさんとしてはこのおじさん誰?という感じの人ばかり。あと、頭が良くて人を小ばかにする感じがする。

 山田 パワハラな感じね。

 石川 家のことは全部、女房任せで「おれの靴下、洗っとけ」みたいな。

 山田 奥さんがその靴下をはしでつまんで、別に洗ってるのも知らない。

 江川 派閥のトップを集めて、まるで部族長会議。ワイドショーネタにならず、首相のリーダーシップを問われる場面を作らないことが大事なんですね。前のお子ちゃま内閣とは違って、実務を任せられる大人が多いが、何のために首相がいるのかよくわからない内閣でもある。与謝野馨官房長官は健康なら首相の器でしょうから、事実上は与謝野内閣ですよね。

     *

 江川 改造後の安倍さんの会見で最初に「美しい国」が出てきたときにはずっこけましたね。まだ懲りてない。

 山田 かたくなです、ホント。最初の会見は短かったですね。大敗したことを忘れたの?というくらい、まさに「鈍感力」で、びっくりしました。ボクやったでしょう。ほらほらみんな見て見て、みたいな感じ。鈍感もここまでくれば立派なものという感じですかね。

 江川 政治家って、言葉が大事ね。今回は、ちゃんと言葉を尽くして説明するという選手宣誓の機会だったのに、それを逃しましたよね。

 山田 あれだけ言葉を並べても響いてこない。

 石川 確かに、確かに。私はあの会見を見て、安倍さんがなんだかすっきりしたように見えた。どんよりしたものが落ちて。

 江川 私は「岸真理教」と呼ぶんですが、崇拝するおじいちゃま(岸信介元首相)のやり残したことをやる使命感に支えられているよう。その点カルト信者の姿にそっくり。信者さんたちの信仰はたたかれるほど、真っすぐに、強く、前向きになりますからね。

 山田 私は放送作家なんで、閣僚になった人ってテレビ番組の企画書に名前が挙がる人だと思うんです。ただ、看板がこれでは視聴率は取れない。メーンを張る人のキャラやまとめる力がすごく大事です。

 石川 (安倍さんの言った)人心一新は無理。安倍さん本人の人心一新がされていない。参院選で国民は今の政府、自民党政治に対してノーを言ったんだと思うんです。ノーと言われた人たちが舞台に上がって、配役を替えてもね……。

 石川 私はずっと主婦を取材して、自分も主婦という立場で言うと、経営不振に陥った時のダイエーにすごく似ているんです。主婦に大人気だったダイエーがどうしてそっぽを向かれたか。「なんでも売っている、だけど、欲しいものは何もない」。これが今回の内閣にもぴったり。だからダイエーと同じような運命をたどるのでは? 良かれと思って売り場を改装したりするんだけど、根本がずれている。

 山田 リフォーム内閣とも言うけれど、リフォーム詐欺もありますよね。

     *

 石川 女性閣僚が少ない。

 江川 上川陽子さんを少子化担当の大臣にしたのはいいけど、この人が生かされるのかな。

 山田 小池百合子さんと田中真紀子さん(元外相)は全然違うと思っているんです。小池さんは中身が男。真紀子さんは「スカートのすそ踏まれた」とか言ったけど、小池さんは踏まれる長さのすそのスカートははかなかった。でも、珍しく女の部分が出ちゃいましたよね、残念ながら。「好き」とか「嫌い」が女偏だということにもかかわるんですけど、やっぱり守屋さん(武昌防衛事務次官)のことは嫌いだったんでしょうねえ。

 江川 損得で動くのが政治家、好き嫌いで動くのが女と言われますよね。

 山田 ただ、小池さんは当然、次を見据えて、ふられる前に自分からふってやったみたいな、そんな感じがした。

 石川 でもね、在任2カ月ですよ。大臣交代は相当なお金がかかる気がするんです。名刺や名札にもお金がかかる。しかも米国やアジアにも行って。無駄遣いのイメージもぬぐえない。

 江川 それに訪問先のパキスタンやインドに対して失礼。あの時点でやめる方向だったわけでしょう?

 石川 すごくせこい話ですけど、就任時にあんな大きな花束をもらっといて、2カ月でねえ。ろくな仕事もしないでねえ。

     *

 江川 舛添(要一)厚労相は口封じですよね。あちこちのテレビ局で批判することはなくなって、大臣をやめた後も批判のトーンを抑えられる。

 山田 でも厚労相は貧乏くじのような気もする。「えらそうなこと言ってできなかった」と言われるポストですから。

 石川 お母様の介護をやったくらいで、厚労相にするという感覚のずれ方。365日介護している方が大勢いるのに、遠距離介護を売りに大臣にするのが、女の感情を逆なでします。

 江川 こういう地味な布陣でワイドショーに注目されなくなると、保護者の後ろで、ボクちゃんが何をやっているか、見えにくくなるのが心配。しっかり見てないと、いつの間にか憲法9条改正へとなだれ込んでいくような気がする。

 石川 政府は、国民が判断できる材料をちゃんと出して、国民の側も消費者感覚で政治をチェックすることが必要だと思う。税金を払っているのですから。

 山田 私は政治家にワイドショーを見てほしい。一般の人がどれだけ大変か感じてほしい。

 石川 総選挙もしてほしいです。日本人って忘れっぽいから。このまま半年、1年と続くと、国民のエネルギーがしぼむ。

 山田 猛暑日が続いて、気温33度でも涼しく感じたでしょ。政治に対してもそうなるのが怖いな。今すぐ民意を形にしたいですよね。

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 ■人物略歴

 ◇やまだ・みほこ

 放送作家。1957年、東京都生まれ。テレビのコメンテーターなど、幅広く活躍。

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 ■人物略歴

 ◇えがわ・しょうこ

 ジャーナリスト。1958年、東京都生まれ。著書に「オウム事件はなぜ起きたか 魂の虜囚」など。

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 ■人物略歴

 ◇いしかわ・ゆうき

 作家。1961年、静岡県生まれ。著書に「家族は孤独でできている」など。

毎日新聞 2007年8月29日 東京夕刊