重茂漁協

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/iwate/news/20080129-OYT8T00756.htm

重茂漁協「死活問題」核燃工場操業中止を要求
署名78万人分首相らに

 日本原燃青森県六ヶ所村)が今春にも予定している使用済み核燃料再処理工場の本格操業の中止を求め、宮古市重茂の重茂漁協(伊藤隆一組合長)は28日、78万人の署名を福田首相と甘利経済産業相あてに提出した。原燃は「安全性については問題がないと考えている」とするが、同漁協は「放射性物質を含む廃液が海に放出されれば、海産物への風評被害は免れず、漁業者にとっては死活問題」と訴えている。

 重茂漁協は、重茂半島の海岸線沿いに漁場を形成している。リアス式海岸特有の小さな湾や入り江では、高品質の「肉厚ワカメ」や昆布、ウニ、アワビなどが採れるほか、親潮黒潮が交じる沖合も、漁場環境に恵まれている。

 再処理工場からの放射性物質の海中放出を知った漁協は、原燃へ説明を求めた。しかし、同漁協の高坂菊太郎参事は「原燃は安全だと強調するだけで納得できない」と漁業者の懸念を代弁する。

 同漁協では、当時の婦人部が中心となって1976年から合成洗剤追放運動を展開し、生活排水が海を汚さないよう取り組むなど、環境保全への思いはひときわ強い。同漁協は07年6月の総会で〈1〉再処理工場の稼働に反対〈2〉海や大気中に放射性物質を放出させないため関係団体と連係して反対運動を実施する――との決議を採択し、消費者団体と共同で署名活動を始めた。

 これに対し、原燃は、放射性物質の海中放出について、「工場内で適切な処理を行った後、国の保安規定に基づいて放出管理目標値を超えないよう放出している。数値は青森県広報などで公表している」と説明する。国の基準では、放射性物質の放出量を年間1ミリ・以下と定めており、原燃はこれより低い同0・022ミリ・を放出管理目標値としている。

 漁協にとっては、放射性物質の海中放出による海洋汚染の危険性を声高に訴えれば、かえって消費者の不安をあおり、風評被害を招きかねないというジレンマもある。県沿岸の各漁協間に、再処理工場への対応に温度差があるのもこのためだ。

 高坂参事は「一番心配なのは、多くの人がこの問題を知らないこと。風評被害を恐れて黙っているのは我々にも消費者にとっても良いことではない」と話す。
(2008年1月30日 読売新聞)