嘱託不採用裁判判決

http://www.labornetjp.org/news/2008/1202436699402staff01

東京都の日の丸・君が代の強制に従わずに処分された教員の嘱託採用が不合格とされたことに対して、これを不当として損害賠償を求めていた裁判。原告は13人。

卒業式目前の判決として注目された嘱託不採用撤回裁判の判決がありました。
卒・入学式での不起立を理由に退職後の嘱託不採用となった原告13名(都立高校、
05年第1次提訴5名・06年第2次提訴8名)が、東京都を被告にして、国家賠償
を請求した裁判です。

東京地裁民事19部(中西裁判長)は、原告の請求を認め、計2700万円余りの賠
償金の支払いを命じました。

判決では、10・23通達に基づく職務命令が憲法19条・旧教育基本法10条に反
するとは言えないとしたものの、再雇用(嘱託)不合格が、「本件職務命令違反を過
大視し、客観的合理性や社会的相当性を著しく欠くもので、その裁量を逸脱、濫用し
たものである。よって、本件不合
格は、都教委による不法行為であると認められるから、原告の損害を賠償すべきであ
る。」とし、損害賠償を命じたものです。

一言で言えば、嘱託採用拒否は「都の裁量権の逸脱・濫用」「違法行為」であり、原
告勝訴ということです。

この判決は現場教職員を励ましています。

以下、NPJ(News for the People in Japan)のホームページで入手できます。
 ↓
http://www.news-pj.net/

・判決要旨
http://www.news-pj.net/pdf/2008/hanketsu-20080207_1.pdf

・判決全文
http://www.news-pj.net/pdf/2008/seimei-20080207.pdf

原告団弁護団声明声明
http://www.news-pj.net/pdf/2008/seimei-20080207.pdf


結論(判決主文)

被告東京都は、原告13人に対して、一人あたり約212万円の損害賠償を払え。

理由

1.本件職務命令が憲法19条に違反するか。

⇒原告らの思想及び良心の自由を侵すものとして憲法19条に反するとはいえない。

 (内容は、ピアノ裁判の最高裁判決に同じ)

2.10.23通達は、旧教育基本法10条の「不当」な支配」あたるか。

⇒許容される目的のために必要かつ合理的と認められる介入は、たとえ教育の内容及び方法に関するものであっても、10条の禁止するものではない。

 本件通達には、合理性も必要性もあった。

 そして、実施指針のみを定めるものであって、教職員が生徒に対して「日の丸」、「君が代」に関する歴史的な事実等を教えることを禁止するものではないし、教職員に対し、国旗、国歌について、一方的に一定の理論を生徒に教え込むことを強制するものとはいえないから、この点からも合理性を欠くとはいえない。

 よって、「不当な支配」には該当しない。

3.本件職務命令は教職員としての専門職上の自由を侵害するか。

⇒自由を侵害するものとは認められない。

4.本件不合格は、原告らの思想、信条に基づく不利益扱いとして、憲法19条に反するか。

⇒特定の思想、良心を有していることを理由として不合格としたものとは認められない。

5.本件不合格に、都教委の裁量の逸脱、濫用があるか。

⇒原告らの不合格は、従前の再雇用制度における判断と大きく異なるものであり、本件職務命令違反を余りに過大視する一方で、原告らの勤務成績に関する他
の事情をおよそ考慮した形跡がないのであって、客観的合理性や社会的相当性を著しく欠くもので、その裁量を逸脱、濫用したものである。よって、本件不合
格は、都教委による不法行為であると認められるから、原告の損害を賠償すべきである。

・積極的に式典の進行を妨害するものでなく、それほど重要なことではない。

・過去には、不起立でも採用されていた。

・たった1回もしくは2回だけの不起立で、それだけをもって勤務成績を不良と判断している。

・定年後の雇用確保や、豊富な知識や技能を役立てるという、制度の趣旨にもそぐわない。

6.損害の有無と金額

 ⇒嘱託員としての1年分の賃金相当額約193万円と弁護士費用19万円を認定。

http://www.nikkei.co.jp/news/main/20080207AT1G0702T07022008.html
君が代訴訟、都の再雇用拒否「違法」・東京地裁が賠償命令
 卒業式の君が代斉唱で起立しなかったことを理由に、東京都が退職後の再雇用を拒否したのは違憲だとして、元教職員13人が都に計7200万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁(中西茂裁判長)は7日、「再雇用者の選考の裁量権を逸脱し違法」と判断、都に計約2700万円の支払いを命じた。

 訴えていたのは都立高の元教諭と元司書。訴状によると、2003―05年の卒業式で君が代を斉唱せず、都教育委員会から職務命令違反として戒告や減給処分を受けた。元教諭らは定年退職後も非常勤での嘱託採用を申請したが、都教委は処分を理由に不合格とし、再雇用しなかった。

 判決理由で中西裁判長は、職務命令の違憲性について「卒業式での国旗掲揚や国歌斉唱は全国で広く実施され、職務命令に必要性や合理性がある。思想や良心の自由を定めた憲法に反するとはいえない」として、原告の違憲主張を退けた。 (20:54)