「月へのぼったケンタロウくん」

 芥川賞作家の柳美里が初めて書いた児童書「月へのぼったケンタロウくん」が書店に並んだ。最愛の人が死を目前にして残した言葉を手がかりに、7年かけて紡ぎだした作品だ。
 7年前、一緒に暮らしていた東由多加さんが癌で亡くなった。看病していた時に聞いた「月にのぼったケンタロウくん」。6歳になったケンタロウくんが、死んだおじいさんに会いに月に行く話だった。この話を東さんは書きたいと願っていたけれど、間もなく亡くなりました。その東さんの代わりに書いた作品です。

 東さんが亡くなって不思議と世界がきれいに見えた。夕焼けやキラキラ光る波。人は死んだらそういった美しい景色を見られなくなるからなのでしょう。だから、桜や月、黒いテントウムシを美しく描きたかった。生きることは素晴らしいと思ってほしいから。

一冊の本が生まれるまでのことを分かると読み方が違ってきますね。