海は危機的な状態


 どのような保護活動においてもまず重要なのは、何が失われてしまい何が残されているのかを把握することです。

海は私たちのひとりひとりにつながっているのだということを意識し、長期的な海洋保護において、私たちひとりひとりが責任ある共通の行動に真剣に取り組むことに、海の未来はかかっているのです。

 私たちは、すでに陸上においては、どのように野生生物とその生息環境を保護および管理していけばよいかについて学んできた経験があります。そしてその対策の多くは、同じ方法、あるいは非常に似通った方法で海洋にも適用することができるのです。けれども、それを先延ばしにする時間はもうありません。私たちが子どもの頃に楽しんだ釣り場や砂浜や湿原は、私たちが今行動を起こさない限り、次の世代へ残すことはできないでしょう。


 原因はたくさんありますが、根源となっているのは持続不可能な漁業、生息環境の破壊、環境汚染という、醜悪な三位一体です。

 私たちは自分自身に、「魚資源は枯渇し海洋は危機的な状態である」という海面下に隠された現実を知らしめる必要があります。

 2003年のピュー海洋審議会(Pew Ocean Commission)を含む最近の多くの調査でも、まったく同じ結論にたどりついています。

 400〜500キロにも成長するクロマグロなど、大型魚の 90%がすでに姿を消し、ニューファンドランド近海のニシマダラ、野生のアワビ、タイセイヨウオヒョウ、チリ産スズキなどは、あまりにも数が少なく、ほとんど存在しないといえます。

繁殖能力をもつメカジキの成魚の生息数は過去の半分にまで低下し、クロカジキを目撃することは今日ほとんどありません。メキシコ本土とカリフォルニア半島のあいだに位置するコルテス海に生息するペリカンは、餌となる魚不足のために飢えに苦しんでいるほどです。

 サンゴ礁は消滅していく一方で、海底はトロール漁により根こそぎ掘り返されつづけています。

 世界からもっとも隔絶されている孤島の浜辺には、ビニールやプラスチックなどの廃棄物によって殺された海鳥が打ち上げられ、海でサーフィンや水泳をしたり、ライフガードを務める人びとは、肝炎の予防に毎年ワクチンを接種するのがもはや通例となっています。
 
 高校生たちが肝炎で苦しんでいるのを見ています。欠席が多く成績不振になり退学一歩手前です。大人の無関心さの責任ではありませんか。

 マグロを食べたいという欲を抑えられないでしょうか。
 残酷な罪を犯していると気が付いて欲しい。

 マグロやメカジキは、体内にメチル水銀を大量に含有しているために子どもや妊婦が食用とするのは大変危険です。

≪参考:『1匹のウミガメが教えてくれる世界』(カール・サフィナ)≫


 環境保護を視点とした魚介類の選び方に関する情報を日本語で提供している非営利団体は見当たりませんが、日本周辺および国際的な漁業資源の状況は、水産庁「水産資源の資源評価」サイトで知ることができます。
http://www.jfa.maff.go.jp/sigenhyouka/sigenhyouka.htm水産総合研究センター

 行動できること:河川、湖、河口域、海岸、湾などを保護する地元の草の根環境保護グループやボランティアの活動に参加しましょう。海洋生物の餌や生息地を確保し、未来の漁場を守る海洋保護区の拡大を目指す法律の制定を支援しましょう。

 それぞれの立場があって価値観にも差があると思います。しかし、自分を上から潰している何かに気が付いていればそれと同様に、自分が潰している「小さなもの」に自然と気がつくと思います。
 守備範囲を限定していてはつまらないでしょう。