不幸を霊のせいにする便利さ

不安な心、行き場所探して

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2007-09-24/2007092410_01_0.html
不幸を霊のせいにする便利さ
立命館大学国際平和ミュージアム館長

安斎 育郎さん
 超自然現象などに詳しく、『騙される人 騙されない人』『だます心 だまされる心』などの著書がある、立命館大学国際平和ミュージアム館長・安斎育郎さんに聞きました。

 「生き返り」は信じないが、「生まれ変わり」は信じたい。「科学」と「願望」を区別しているのでしょうね。「神様」も「願いをかなえてくれる存在」として「信じたい」気分があるのでしょう。

 相変わらず「霊」は人気ですね。不幸を霊のせいにし、除霊して元気を取り戻す―そんな「便利さ」もあるのでしょう。スピリチュアル・カウンセラーの流行は「癒し」を求める心ゆえでしょうが、不幸の本当の原因を見据えずに、前世や神の言葉に事寄せていっときの心の安らぎを求めるような生き方は本質的解決とは無縁でしょう。

 人々は昔から天地の神々に心寄せてきました。750年近くも前、親鸞聖人は『愚禿(ぐとく)悲嘆述懐和讃(ひたんじゅっかいわさん)』を書いて、人々が天神(てんじん)地祇(ちぎ)や卜占(ぼくせん)祭祀(さいし)に入れあげているありさまを深く嘆き、批判しました。

 しかし、現代の心霊ブームはテレビ界が一部の視聴者のオカルト志向に迎合し、視聴率稼ぎのために「霊能者」という虚像をでっち上げ、そこに人間ドラマを重ね合わせてゴールデンアワーに放映することによって作られたものです。

 人間が不幸に陥るのには3つの原因があります。(1)社会のありようにかかわる構造的な原因、(2)自分自身の生き方にかかわる原因、(3)災害や事故などの偶発的な原因です。まじめに生きようとしている人々にとって、(1)はとりわけ大切です。

 不幸の原因を霊に事寄せて解釈するような非社会的な見方を脱し、不幸を生み出す社会のありようを変革する意志と行動を紡(つむ)ぎだす努力こそが重要です。

 心霊に心寄せる人々には、解決の道が本当にスピリチュアル・カウンセラーの言葉を信じることなのか、それとも、さまざまな不幸を生み出す社会を変革の対象としてとらえ、自らも人々と手を携えて社会に働きかけることなのか、心通わせながら話し合うことが大切です。

 不幸の原因を心霊のせいにするような非社会的な見方は、それらを生み出す悪政を免罪する道にも通じることを訴えかけることが重要でしょう。

ストレスは「社会のありようにかかわる構造的な原因」が一番重要だと何十年も前から言われていますが、ストレスの原因をなくさなければ今の自殺対策などという枝葉を整えるようなやりかたでは無駄だと思っている。最近、伊藤千尋さんが書いたコスタリカについての本から知ったのだが、日本でも子どもの頃から生きるための実践的教育に取り組んでいるなら自殺はなくなるだろうと思っている。